日照権とは|トラブルに合う前に知っておきたい法的基準を解説

隣人トラブル

「住んでいる住宅の近くに、大きなビルやマンションが建設されそうだが、建設されると日当たりが悪くなってしまうので困る。」

「近くに高層マンションが建設され、日照権を侵害されたから、損害賠償請求をしたい。」

など、日照権にまつわるトラブルはたくさんあります。

・そもそも日照権とはどんな権利なのか?
・どのような裁判例があるのか?
・日照権を侵害されたら、損害賠償請求をすることができるのか?

この記事では上記のような、日照権にまつわる法律問題について、分かりやすく解説していきます。

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日照権とは

日照権とは、建物の日当たりを確保する権利のことをいいます。

日照権という権利自体は、法律で明記はされていません。

しかし、日照権は多くの「裁判例で認められている権利」であり、日照権の侵害により建築の差し止め請求や損害賠償請求が認められる場合があります。

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日照権に関わる法律

建築基準法について

先ほど解説した通り、日照権は、法律には明記されていませんが、日照権に関わる法律として「建築基準法」という法律があります。

建築基準法は、国民の生命・健康・財産の保護を目的とした法律で、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めています。

たとえば、建築基準法では日照権に関わる定めとして、「斜線制限」や「日影規制」というものがあります。以下、それぞれ簡単に解説します。

「斜線制限」とは

斜線制限とは、ひと言でいえば、建築物の高さ制限のことです。

斜線制限には、「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」という3つの斜線制限があり、内容はそれぞれ異なりますが、いずれも建物と建物の間の空間を確保して、道路や隣地の日照・採光・通風を妨げないことを目的として、制限されるものです。

「日照権」とは明記していませんが、この斜線制限により、日照権が保護されていることが分かります。

「日影規制」とは

日影規制とは、建物を建設する際、近隣地域に一定時間以上、日影を生じさせないことを目的として、定められた規制です。

日照を確保するために、1年でもっとも日が短い冬至の日(12月22日ごろ)を基準として、定められます。

ここでも、「日照権」とは明記されていませんが、この日影規制により、日照権が保護されていることが分かります。

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建築基準法は絶対的な基準ではない?

建築基準法では「斜線制限」や「日影規制」により、日照権を保護していますが、これは絶対的な基準ではありません。

日照権の侵害は、被害者が受ける被害が「社会通念上一般に受忍すべき限度を超える場合」には、違法と判断されますので、建築基準法における斜線制限や日影規制に適合していても、受忍すべき限度を超える場合には、違法と判断されることがあります。

たとえば、日影規制のない商業地域において、建築の差し止め仮処分が認められた事例として、次の裁判例があります。

<大分地方裁判所 平成9年12月8日>

この裁判例は、日影規制のない商業地域に14階建ての分譲マンションの建築計画がなされ、周辺に住む住民が、差し止めの仮処分を申し立てた事案です。

裁判所は、①周辺住民が5年以上もの間、日照を享受してきたこと、②区分上は商業地域だとしても、実際には低層住居が多いこと、などの事情を総合的に考慮した上、被害は受忍すべき限度を超えるとして、建築の差し止めの仮処分を認めました。

この裁判例からも分かるように、建築が違法となるか否かは、建築基準法における斜線制限や日影規制のみを基準とするのではなく、周辺地域の様々な事情を総合的に考慮して判断することになります。

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受忍限度を超えるかどうかは、どのように判断するの?

先ほど解説したとおり、日照権の侵害は、被害者が受ける被害が「社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるか否か」により判断することになります。「社会通念上一般に受忍すべき限度」のことを、「受忍限度」ともいいます。

この、社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるか否かを判断するにあたっては、以下のような事情を考慮することになります。

①被害の程度

どの程度、日当たりが悪くなるのかが考慮されます。一定時間のみなのか、長時間にわたってなのか、被害の範囲は広いのか狭いのかなどが考慮されます。

②日照を保護する必要性

地域によって、日照を保護する必要性は異なります。畑や田んぼが多い地域は、ビルしかない地域に比べて日照は重要になりますので「日照の必要性」が高いことが考慮されることになります。

③建物を建築する際の配慮の有無

建物を建築する際に、周辺地域の日当たりについて、十分に配慮していたか否かが考慮されます。また、周辺地域の被害を回避するために、十分に努力していたか否かも考慮されます。

④建物の用途・性質

新たに建築される建物は、公共物なのか私有物なのか、被害を受ける建物は、住居なのか商業施設なのか、など、建築される建物や被害を受ける建物の用途・性質も、考慮されます。

⑤建物の法令適合性

建築される建物が建築基準法に適合しているか否かが考慮されます。

もっとも、先ほど解説したとおり、建築基準法における斜線制限や日影規制は、絶対的な基準ではないため、適合しているからといって直ちに適法になることはありません。

⑥事前説明の有無など、交渉時の態度

新たに建物を建築するにあたって、周辺地域に住む住民に対して、説明会や意見交流の場を設けたか否かが考慮されます。

仮に周辺住民が建築に反対した際には、誠実な対応をとっていたか、交渉の場を設けていたか、などが考慮されます。

以上のように、建築が社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるか否かは、様々な事情が
考慮されることになります。①~⑥は、主に考慮される事情ですが、これ以外の事情も事
案に応じて考慮されることになります。

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日照権侵害による差し止め請求や損害賠償請求について

差し止め請求

建築工事が完了してしまった後に、「日照権を侵害しているから建物を壊せ!」と主張することは非常に困難です。

なぜなら、完成した建物を取り壊すのは、社会的な損失が非常に大きく、また巨額な費用もかかるからです。

そのため、違法な建築物の「建築工事の時点で、工事を中止」させる必要があります。

この、工事の中止を求める請求を、差し止め請求といいます。

もっとも、すでに進行している建築工事を中止させるのは、よっぽどのことなので、差し止め請求は被害が著しい場合にのみ認められ、慎重に判断されることになります。

損害賠償請求

工事の差し止め請求が認められず、建物が建築されてしまい、これにより被害を受けている場合には、日照権の侵害による精神的苦痛として、損害賠償請求をすることになります。

この損害賠償請求の根拠は、民法第709条及び第710条です。

<第709条>
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

<第710条>
「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」

損害賠償請求をする場合には、日照権の侵害が、社会通念上一般に受忍すべき限度を超えることを、主張・立証する必要があります。

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実際の3つの裁判例を解説

日照権侵害はあるが、受忍限度は超えないとされた裁判例

<大阪地方裁判所 平成17年9月29日判決>

原告Xは、Aマンションの1階に住んでいました。ある日、Xの住むAマンションの南側の敷地にアパートが建設され、これによりXの部屋への日当たりが悪くなりました。
そこでXは、日照権の侵害に基づき、損害賠償請求をしました。

判決

Xの請求棄却。

裁判所はまず、Xの日照権の侵害があることは認めました。

その上で、①建築されるアパートは法令に適合していること、②Aマンションの1階はそもそも日照権が制限されており、Xはそのことを認識した上でAマンションの1階を購入していること、③Aマンションの南側の敷地に、建物が建設されることは、予測できる範囲内であること、などの理由から、Xの日照権の侵害は軽微であり、社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるとはいえず、違法にはならないとしました。

太陽光パネルへの日射を妨げられた裁判例

<福岡地方裁判所 平成30年11月15日判決>

原告であるX会社は、X会社の住宅地に太陽光発電設備を設置していました。ある日、X会社の住宅地の南側に、Y社の建物が建築され始めました。

その結果、X社の太陽光発電設備の一部分である太陽光を受光するパネルの部分に、Y社の建物が立ち並ぶこととなり、X社は太陽光をこれまで通り受光することができなくなりました。

そこで、X社はY社に対し、日照権の侵害に基づき、損害賠償請求をしました。

判決

Xの請求棄却。

まず、裁判所は、「太陽光発電のために太陽光を受光する利益は、法律上保護に値する利益である」としました。

その上で、次の理由によりX社による損害賠償請求を認めませんでした。

①太陽光発電は近年普及されたものであることから、どの程度の日当たりが確保されていれば利益の侵害に値するのかを明確に判断することができないこと。

②X社の太陽光パネルの位置が低く、隣に建物が建設されると、太陽光パネルが日影になってしまうことはX社において、容易に予測できたこと。

③X社の太陽光パネルに日影ができることで、住宅地の共用設備の運営に大きな支障が出るわけではないこと。

日照権についての説明義務違反が認められた裁判例

<東京地方裁判所 平成10年9月16日判決>

Xは、マンションの仲介業者のチラシに「日照良好」と記載されていたことから、マンションを購入しました。マンション購入の際、マンションの隣地には建物の建設が既に予定されていましたが、仲介業者はXに対して、「隣地に建物が建設されることはなく、日照は良好です」と説明していました。
そして、予定通りに隣地には建物が建設され、Xは日照権を侵害されることになりました。

判決

裁判所は、仲介業者の説明は、虚偽のものであり、説明義務に違反すると認定しました。

マンション購入の際、日照権についても説明義務の内容になる場合があることが分かります。

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日照権に関するその他のトラブル

樹木やフェンスによって日当たりが悪くなった場合

樹木やフェンスによって日当たりが悪くなった場合にも、その被害が「社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるか否か」が判断基準になります。

隣の敷地にマンションが建つ場合に比べて、樹木やフェンスは細くて低いことが多いので、受忍限度を超えると判断されることは、あまりないと考えられます。

東・北・西側の場合にも日照権を主張できる?

誤解されがちですが、日照権のトラブルは、南側に限られるわけではありません。

たしかに、南側は東・北・西側に比べて、一番日当たりが良いですが、東側も、朝方の日当たりは良く、西側も、夕方は部屋が暖まるくらい、日当たりが良くなります。

そのため、方角に限らず、日照権の侵害が社会通念上一般に受忍すべき限度を超える場合
には、日照権の侵害を主張できることになります。

ただし、受忍すべき限度を超えるか否かを判断するにあたっては、先ほど解説したとおり、被害の程度(日当たりの時間など)も考慮されることになるので、南側以外は、そもそも日当たりの時間が短いとして、被害の程度は軽微であると判断される可能性があると考えられます。

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まとめ

「日照権」は、法律では明記されていませんが、判例上認められている権利であり、また建築基準法では日照権を保護する規定もあります。

日照権の侵害は、「社会通念上一般に受忍すべき限度を超えるか否か」が判断基準となり、この判断にあたっては様々な事情が考慮されることになります。

日照権が侵害された場合には、差し止め請求や損害賠償請求をすることができる場合があります。

周辺地域の事情などによって結論は異なりますので、「日照権を侵害されている」又は「日照権を侵害されそう」と、悩んでいる場合には、弁護士など法律の専門家に相談することをオススメします。

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