鳥獣保護法とは|違反するとどうなるか?等わかりやすく解説

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「鳥獣保護法」という法律を聞いたことはあるでしょうか。

  • そもそも鳥獣保護法とは、どんな法律なのか?
  • 対象となる生物はなにか?
  • 鳥獣保護法違反とは、どういうものを指すのか?
  • 罰則規定はあるのか?

など、鳥獣保護法について様々な疑問があるかと思います。

この記事では、鳥獣保護法の全般について、分かりやすく解説していきたいと思います。

鳥獣保護法ってどんな法律?目的はなに?

鳥獣保護法の正式名称は?

鳥獣保護法の正式名称は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といいます。

正式名称は長いので、一般的には「鳥獣保護法」や「鳥獣保護管理法」などと呼ばれます。この記事では、この法律のことを「鳥獣保護法」と呼ぶことにします。

鳥獣保護法とは?その目的は?

鳥獣保護法とは、日本国内に生息する野生の哺乳類や鳥類について、捕獲・飼養の規制や、生息環境の保護、個体数の調整、狩猟に関する制度、などを定めた法律のことです。

鳥獣保護法の目的は、第1条において次のように規定しています。

<第1条>
「この法律は、鳥獣の保護を図るための事業を実施するとともに、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止し、併せて猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。」

少し長くて読みにくいかもしれませんが、要するに、野生動物の「生活環境を保護することで自然環境も保護し、私たち国民のより良い生活を確保」しましょう、ということです。

鳥獣保護法の歴史

もともとは、狩猟について規制していましたが、明治時代に入って急速にその規則が緩み、安全や秩序維持のために、1873年に「鳥獣猟規則」が制定されました。

この時点では、まだ「保護」という考え方は入っていませんでした。

その後、1963年に基本的な法律の形が整い、2002年に大きな改正が行われて今の法律の形になりました。

鳥獣保護法の対象となる野生動物は?

鳥獣保護法の対象となる野生動物

鳥獣保護法における「鳥獣」について、第2条は次のように規定しています。

<第2条>
「この法律において『鳥獣』とは、鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう。」

第2条から分かるように、鳥獣保護法の対象となる「鳥獣」とは鳥類、哺乳類の野生動物をいいます。

そしてこの「鳥獣」には、平成14年の法律改正により、ネズミ・モグラ類と海棲哺乳類が含まれることとなりました。

鳥獣保護法の対象とならない野生動物

鳥獣のうち、「一部」のネズミ類と海棲哺乳類は鳥獣保護法の対象外とされます。

理由は、鳥獣保護法第80条の規定により、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」に該当するからです。

鳥獣保護法の対象外とされる、ネズミ類と海棲哺乳類は次のとおりです。

<ネズミ類>
ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ

<海棲哺乳類>
ニホンアシカ、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ、クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシ及びジュゴンを除く海棲哺乳類

狩猟の対象となる鳥獣は?

鳥獣保護法は、第2条第8項において、狩猟の対象となる鳥獣以外の狩猟を禁止しています。

狩猟を行うためには、あらかじめ「狩猟免許」を取得した上で、狩猟をしようとする都道府県に狩猟者登録を行い、所定の狩猟税を納付する必要があります。

また、狩猟免許の種類によって、使用できる猟具狩猟が異なりますし、狩猟ができる区域・期間・猟法なども、法令で定められた制限を遵守する必要があります。

「狩猟の対象」となる鳥獣は、鳥獣保護法の施行規則に規定されており、次のとおりです。

<鳥類(28種類)>
キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、カワウ、ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く。)

<獣類(20種類)>
イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌ-トリア、ユキウサギ、ノウサギ、タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(ツシマテンを除く。)、イタチ(雄)、チョウセンイタチ(雄)、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン

鳥獣保護法における各主体の役割

国の役割

国は、「国際的・全国的」な鳥獣保護の観点から、法律や基本指針等を制定する役割を果たします。

日本国における鳥獣の保護とその管理についての行政の方向性を示し、またこれに沿った取り組みを進めます。

地方公共団体の役割

地方公共団体は、地域における鳥獣の保護とその管理の観点から、地域の特性を踏まえたうえ、鳥獣保護管理事業計画や特定計画の作成を行い、鳥獣の保護管理の基本的な枠組みを構築するといった役割を果たします。

「鳥獣保護管理事業計画」とは、全国的に統一のとれた鳥獣保護行政を計画的に推進するために、環境省の定める基本指針にしたがって作成された計画のことをいいます。これは、昭和39年度から実施されています。

計画の主な内容は、下記に関する事項です。

①鳥獣保護区・特別保護地区・休猟区の指定と整備

②鳥獣の人工繁殖・放鳥獣

③鳥獣の捕獲許可

④猟具の使用規制

⑤特定鳥獣保護管理計画

⑥鳥獣生息状況の調査

⑦鳥獣保護事業の実施体制

⑧その他(普及啓発、傷病鳥獣の救護、安易な餌付けの防止、感染症への対応等)等

計画の期間は、5年間です。

事業者や民間団体の役割

鳥獣の保護や管理を行う事業者や民間団体は、国が制定する法律や地方公共団体が構築した計画について、理解を深め、活動を行う役割を果たします。

専門家などの役割

鳥獣の保護や管理については、専門的な知識が必要になります。

そこで、専門家は地方公共団体などに専門的な観点から、アドバイス等を行う役割を果たします。

具体例1:ツバメの巣を壊すことは鳥獣保護法違反になるの?罰則はあるの?

次の事例について、鳥獣保護法違反になるのか、検討してみましょう。

<事例>
Aくんは、自宅のガレージにできた「ツバメの巣」を棒で突いて壊してしまいました。しかし、このツバメの巣の中には卵やヒナはいませんでした。

このAくんの行為は、鳥獣保護法違反になるでしょうか。

鳥獣保護法にはどのように規定されている?

この事例を検討するにあたって、まずは鳥獣保護法第8条柱書本文を見てみましょう。

<第8条柱書本文>
「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。)をしてはならない。」

第8条は、鳥獣や鳥類の卵を採ったり傷つけたりすることを禁止しています。

先ほど解説したとおり、「鳥獣」にはツバメが含まれますので、ツバメは鳥獣保護法の対象となります。

そのため、第8条により、ツバメのヒナやツバメの卵を採ったり、傷つけたりすることは禁止されます。つまり、ツバメのヒナを採ることや、ツバメの卵を傷つける行為は、鳥獣保護法違反となります。

Aくんの行為は鳥獣保護法違反にならない?

ただ、Aくんは、たしかにツバメの巣を壊しましたが、壊したツバメの巣の中には、ツバメのヒナやツバメの卵はありませんでした。

そのため、Aくんはツバメのヒナやツバメの卵を一切傷つけていないことになります。

先ほど解説したとおり、鳥獣保護法違反となるのは、あくまでツバメのヒナやツバメの卵を採ったり傷つけたりした場合です。

したがって、ツバメの巣を壊したにすぎず、ツバメのヒナやツバメの卵を一切傷つけていないAくんは、鳥獣保護法違反になりません。

仮に壊したツバメの巣の中にヒナや卵があった場合は?

仮に、Aくんが壊したツバメの巣の中に、ツバメのヒナがいた場合や、ツバメの卵があった場合には、Aくんはツバメのヒナやツバメの卵を傷つけてしまったことになるので、鳥獣保護法違反になります。

つまり、ツバメの巣は、ヒナや卵があるか否かによって鳥獣保護法違反になるか否かが決まってきます。

外から見ただけでは、ツバメの巣の中にヒナや卵があるかどうかは分かりません。そのため、ツバメの巣は壊さないほうが無難です。

万が一、ツバメの巣による被害が大きくて、健康を害したりする危険がある場合には、住んでいる自治体に問い合わせてみましょう。場合によっては、ツバメの巣を壊す許可がおりる可能性があります。

鳥獣保護法に違反したら罰則はある?

鳥獣保護法は、次のとおり第83条において罰則を定めています。そして、第83条1号において、先ほど解説した第8条に違反した者を挙げています。

<第83条柱書>
「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」

<第1号>
「第8条の規定に違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をした者(許可不要者を除く。)」

したがって、ツバメのヒナや卵のあるツバメの巣を壊した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。

カラスを捕まえてもいい?

カラスを捕まえるのは鳥獣保護法違反

先ほど解説した鳥獣保護法第8条により、カラスを捕らえることは許されません。

また、捕らえるだけでなく、駆除することも鳥獣保護法違反になります。

鳥獣保護法に違反すると、1年以上の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性がありますので、注意が必要です。

もっとも、カラスはゴミを荒らしたり、農作物などを荒らすこともあります。農業をしている方々にとっては、農作物を荒らすカラスは厄介な存在です。

このように、カラスによって被害を受けている場合には、「有害鳥獣捕獲の許可」を受けてカラスを捕獲することができる可能性があります。カラスによって被害を受けている場合には、住んでいる自治体に連絡をして、相談してみましょう。

カラス除けの対策について

カラスによって被害を受けていたとしても、自己判断でカラスを捕まえたり、駆除することはできません。しかし、自分たちでカラス除けの対策をすることはできます。

以下、自分たちでできるカラス除けの対策をご紹介します。

ゴミネットを使う

カラスは、ゴミ捨て場にあるゴミ袋をつついて、ゴミを散らかすことがよくあります。ゴミ袋の中にエサが入っていると判断し、ゴミ袋をつつくそうです。

そのため、ゴミ捨て場には、ゴミネットをかぶせておくことが有効的です。

ほとんどの自治体は、すでにゴミネットによるカラス除け対策を行っていると思いますが、まだ対策ができていない場合には、住んでいる自治体に相談してみるといいかもしれません。

光を反射するものを吊るす

光を反射するものを吊るしておくと、カラスが寄ってきにくくなり、効果的です。

CDやアルミホイルを貼ったシートなど、手軽に手に入れることができるもので良いと思います。

針金のハンガーを使用しない

カラフルな色をした針金のハンガーを使用している方も多いと思いますが、針金のハンガーはカラスの巣作りに使われますので、注意が必要です。

針金は丈夫ですし、軽くて細いため口にくわえやすく、またカラスの巣のサイズにはちょうどいいのです。

そのため、カラスは針金のハンガーを欲しがりますので、プラスチックハンガーなど、太くて滑りやすいハンガーを使用することをオススメします。

まとめ

鳥獣保護法は、野生動物の生活環境を保護することで自然環境も保護し、私たち国民のより良い生活を確保するための法律です。

鳥獣や鳥類の卵などを採ったり傷つけたりすると、鳥獣保護法に違反することになります。

鳥獣保護法に違反すると、罰則を課される可能性もあるので注意が必要です。

鳥獣により被害を受けている場合には、自己判断で対処するのではなく、住んでいる自治体に問い合わせるなどして解決するようにしましょう。

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