少年事件の実名報道にメリットはある?少年法61条と表現の自由

少年事件の実名報道少年事件

少年犯罪のニュースで、プライバシーが議論になることがあります。

被害者側の情報は詳細に報道されるのに、加害者側の匿名性が保たれる点です。

残忍な凶悪事件でも、加害者が少年だという理由で保護されるのは納得できないという意見もあります。

あなたは、少年犯罪の実名報道に賛成ですか?それとも反対ですか?

川崎市中1殺害事件の実名報道

2015年に川崎市の中学1年生・上村遼太さんが殺害された事件。首を刃物で斬りつけられる残忍な犯行で、遺体は多摩川河川敷で発見されました。加害者は主犯格の18歳少年と17歳少年2人でした。

少年犯罪の場合、少年法61条の規定により実名報道が規制されています。

【第61条】家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない

しかし、「週刊新潮」は18歳加害少年の実名と顔写真を公表。加害少年のあまりに身勝手な犯行動機や残忍極まる手口について実名報道し、世に問うたのです。

少年犯罪報道については1958年に報道協定ができて以来、その匿名性が担保されてきました。

川崎市中1男子生徒殺害事件で実名報道に踏み切った「週刊新潮」などの週刊誌は、新聞やテレビと違い「記者クラブ」に入っていないのです。

少年法61条に関する裁判例

記者クラブに加盟していない週刊誌では、「週刊文春」が1989年に発生した女子高校生監禁殺人事件を実名報道。

実名で報道された加害者側は、出版社に対し少年法61条で保護されている権利を侵害されたとして損害賠償請求の訴えを提訴できます。

表現の自由とプライバシーの侵害との兼ね合いについては、過去に判例が出されています。

1998年の堺市通り魔殺傷事件で、「新潮45」が当時19歳の加害少年の実名報道をしました。

加害者側は版元とライターを提訴。これに対し2000年2月29日、大阪高等裁判所第9民事部は「表現行為が社会の正当な関心事であり、表現内容や方法が不当でない場合、違法性を欠き、違法なプライバシー権等の侵害とはならない」と判断。

さらに少年法61条に関して「同条が少年時に罪を犯した少年に対し実名で報道されない権利を付与していると解することはできない」としました。

まとめ

少年による凶悪犯罪は「少年法61条」によって実名報道されない。

少年の更生を第1とし、市民の安全は脅かされているのです。アメリカやイギリスなどでは、重大事件を起こした少年について、原則実名報道がなされます。社会公益性を何より重要視しているためです。

憲法21条は「国民の知る権利」を規定しているのですから、凶悪犯罪者は成人だろうと未成年だろうと、データベース化してほしいという意見もあります。

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