少年法61条で実名報道を防げるか?ネット私刑とプライバシー

ネットリンチ少年事件

少年法61条の規定が少年加害者の実名報道を禁止しています。

一部週刊誌などが加害少年の実名・顔写真を掲載したものの、おおむねテレビなどのメディアでは未成年者の実名は公表されていません。

しかし、インターネットの普及により、少年法61条は形骸化しているのが実態。少年法は時代の変化に対応しているのでしょうか?

ネット私刑と川崎市中1殺害事件

2015年に起きた川崎市中1男子生徒殺害事件では、当時18歳の加害少年の情報がインターネット上に晒される事態が。加害少年のネット動画が拡散され、少年の自宅前の様子や親族などが映し出されました。これについて東京弁護士会は「インターネットも少年法61条の『新聞その他の出版物』と同視できる」としています。

参考:インターネットも少年法61条の「新聞その他の出版物」と同視できる
東京弁護士会

過去には「新潮45」が加害者側から提訴された事例がありました。

しかし、インターネットでのtwitterや掲示板での拡散力は凄まじく、プロバイダーや書き込みをした個人を特定するのは難しいのが現状。このようなネット社会では、犯罪発生のごく早い時期に少年犯罪加害者の名前や顔写真が出回ります。

少年法61条に基づきメディアの実名報道を規制するのは、もはや時代遅れかもしれません。

ネットの書き込みによる名誉毀損の判例

ネットユーザーが少年犯罪加害者の個人情報をネット上に書き込む行為ですが、その特定した個人が犯罪加害者でなかったら、名誉毀損罪は成立してしまいます。また、加害者の家族を晒す行為も、プライバシーの侵害に当たる場合があります。

名誉毀損罪【刑法230条】
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」

さらに、掲示板に書き込まれた情報を第三者がコピペして拡散した場合ですが、コピペが違法であるとした判例があります。東京高等裁判所における平成25年9月6日判決は「2ちゃんねるにおいて、情報を広範囲に広め社会的評価をより低下させた」として転載記事の名誉毀損を認定しました。正義感にかられた安易な投稿は、立派な犯罪となり得るのです。

ただし、刑法230条の2に例外規定があります。

  1.  公共の利害に関する事実
  2.  表現することに公益目的がある
  3.  記載内容が真実である

これらの場合には、名誉毀損には当たらないのです。

また、刑法230条の2の規定は成人か未成年かを区別していません。いずれにせよ、ネット私刑という制裁は罪に問われる可能性があり、犯罪被害者ご遺族にとっても迷惑だと言えるでしょう。

まとめ

現代人には、ネットは必須アイテムとなっています。加害少年の更生を第1とし被害者ご遺族への保護が甘い少年法には疑問を感じていますが、ネットでの書き込みはついしてしまいがちです。

今回の少年法61条とネットでの拡散について、色々と考えていく必要があります。

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