ニュースで聞く「わいせつな行為」「みだらな行為」「淫行」の違い

ニュース報道 基礎知識
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テレビや新聞などで刑事事件のニュースを見ていると、「〜にわいせつ(猥褻)な行為をして逮捕」「〜にみだら(淫ら)な行為をして逮捕」などという言葉を耳にすることがあるんですが、違いが分からない

曖昧な表現を使われると、事件の悪質さが伝わらないですよね

何気なく聞き流してしまっている、この「わいせつな行為」や「みだらな行為」という言葉。
なんとなく同じ意味のようなものだと思われがちですが、実は違いがあるんです。

また、「わいせつな行為」「みだらな行為」と似た言葉として「淫行(いんこう)」という言葉が使われることもあります。

今回はこの3つの言葉がどのような違いを持つのかを解説していきたいと思います。

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性犯罪の種類(総論)

まずはじめに、「性犯罪」とはどのような犯罪を指すのかという基本的な知識とともに、性犯罪には一体どのような種類があるのか確認していきます。

「性犯罪」とは?

性犯罪とは、自身の性欲を満たすために法を犯した罪全般のことを指します。
強姦罪や強制わいせつ罪などが代表的な性犯罪としてよく知られていますが、痴漢やのぞきなども性犯罪の一種とされています。

また、加害者が男性、被害者が女性という固定観念を持っている方も多いのですが、もちろん場合によっては女性が加害者で、男性が被害者となることもあります。

では、性犯罪にはどのような種類のものがあるのでしょうか?

性犯罪の種類

「性犯罪」は大きく分けて、以下の2種類に分別することができます。

  • 暴力的性犯罪
  • その他の性犯罪

この2種類の他にも、「性犯罪」として分類されないものの、それに酷似した違法行為も存在します。

暴力的性犯罪

「暴力的性犯罪」とは、相手の了承のないもしくは意図していない性行為を、暴力や脅迫などの手段を用いて無理矢理行なう性犯罪のことです。

具体的には、

  • 強姦、レイプ、性的暴行
  • 強制わいせつ

などを挙げることができます。

その他の性犯罪

暴力的性犯罪以外の性犯罪には以下のようなものが挙げられます。

  • 痴漢
  • のぞき
  • 盗撮
  • 児童売春
  • 公然わいせつ など

直接的に暴力や脅迫などを行っていなかった場合にも、被害者自らの睡眠や飲酒状態を利用してわいせつな行為をした場合には、本人の意思に反する行為であると見なされ、「準強姦」や「準強制わいせつ」となります。

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わいせつな行為とは

「わいせつな行為」がどんな行為を指すのかは、刑法176条によって規定されています。

刑法176条
13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。

では、この「わいせつ」とはどのような意味を持つのでしょうか?

判例では、「わいせつ」とは「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と定義されています。

この定義をもう少し具体的に考えてみますと、

  • 身体に触れる
  • キスをする
  • 衣服を脱がせる

などの行為と考えることができます。

しかし実務上の扱いは、ケースによって様々であることが多いのが現実です。

例えば、「痴漢」は相手が意図しない、了承をとっていない状態で身体を触るなどの行為であることから、まさに強制わいせつ罪に該当すると考えることができます。

しかし現実には、下着の中に手を入れて直接身体に触れた場合には「強制わいせつ罪」の適用、下着の上から身体に触れたのみの場合には、強制わいせつ罪ではなく「迷惑防止条例違反」の適用が行われています。

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みだらな行為とは

「みだらな行為」については、青少年健全育成条例や淫行条例に定められています。
この淫行条例は各都道府県によって多少の違いがありますので、ここでは東京都の青少年育成条例18条を参照します。

東京都青少年育成条例18条の6
何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為をおこなってはならない。

ここで「みだらな行為」とは、具体的には「性交」を指します。

もちろん、性交があった場合でも相手の同意があれば強姦罪は成立しません。

例えば相手が18歳未満であった場合にも、結婚を前提とした紳士な交際をしているような場合には、性行為を行ったとしても違法性が認められません。
そのため強姦罪には当たらず、罰せられることもありません。

しかし援助交際などの名目で金銭を支払い、女子高生など18歳未満の者と性交した場合には、もしも相手の同意があったとしても、青少年保護育成条例違反と判断され、罰せられることとなります。

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淫行とは

「淫行」については、児童福祉法34条で規定されています。

児童福祉法34条1項6号
何人も次に掲げる行為(児童に淫行をさせる行為)をしてはならない。

「淫行」とは「みだら(淫ら)な行為」のことです。
そのため基本的には「みだらな行為」と同様に性交を意味します。

しかし児童福祉法上での「淫行」は「みだらな行為」よりも少し広い概念で捉えられており、性交に加えて性交類似行為も含まれます。

ここでの「性交類似行為」とは、判例上、「異性間の性交とその態様を同じくする状況下」における、「性交を模して行われる手淫・口淫行為、同性愛行為など」「実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為」とされています。
具体的には、

  • 児童に性器を触らせる
  • 児童の乳房、性器を弄ぶ
  • 児童の性器に陰茎を押し当てる

といった行為などのことを指します。

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それぞれの刑事罰

これまで「わいせつな行為」や「みだらな行為」「淫行」がどのような行為を指すのかを解説してきました。
では、それぞれの行為に及んでしまった場合にはどのような刑事罰を受けるのでしょうか?

「わいせつな行為」に対する刑事罰

ではさっそく「わいせつな行為」に分類される主な罪に対する刑事罰を見ていきましょう。

強制わいせつ罪:6ヶ月以上10年未満の懲役

暴行や脅迫を利用して、相手の了承・同意なくわいせつな行為を行なった場合には、「強制わいせつ罪」となります。
相手が13歳以下だった場合には、たとえ相手の同意があった場合でも、強制わいせつ罪と見做されます。

強制わいせつ罪は、親告罪から非親告罪と改正されました。
つまり、被害者の訴えがなければ告訴されることはなかったのですが、被害者の訴えの有無に関わらずに、捜査機関が逮捕・起訴を行うことができるようになったのです。

強制わいせつ罪に対する刑事罰は、6ヶ月以上10年未満の懲役刑のみです。

強制性交等罪:5年以上の懲役

暴行や脅迫を利用して、相手の了承・同意なく性行為を行った場合に、強制性交等罪が成り立ちます。

相手が13歳未満であった場合には、仮に相手の同意があったとしても、強制性交等罪と見なされます。

「強制性交等罪」は「強姦罪」という名称でご存知の方も多いと思います。
2017年に「強姦罪」から「強制性交等罪」へと名称が変わり、親告罪から非親告罪となりました。
そのため、被害者の訴えの有無に関わらず、捜査機関が逮捕・起訴を行うことができるようになりました。

刑事罰についても改正され、5年以上の懲役と重罰化されました。

性行為や性行為に至るまでの間に、被害者に怪我をさせたり死亡させたりした場合には、無期および6年以上の懲役と、さらに刑罰が重くなります。

公然わいせつ罪:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

公衆の面前でわいせつな行為をした場合には、公然わいせつ罪となります。

具体的には、公然で下半身を露出したり性的行為を行うような場合を指します。

ここで「公然」とは、人目につく場所ということです。
そのため、道路や公園・デパートなど公共の場はもちろんのこと、個人の住宅の中であっても周囲から丸見えであるような場合にも「公然」と見做されます。
また、SNSなどのインターネット上も「公然」に当たります。

公然わいせつ罪の刑事罰は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
公然わいせつ罪には特定の被害者がいないので、強制わいせつ罪や強制性交等罪に比べて比較的軽い刑罰となっています。

児童売春・児童ポルノ:5年以下の懲役または300万円以下の罰金

18歳未満の児童に対して、買春行為(お金などの金品を渡す代わりに性的行為を行うこと)をすると、「児童買春罪」となります。

また、18歳未満の児童のわいせつな写真や動画などを撮影すると、「児童ポルノ製造罪」となります。

自ら撮影していない場合であっても、児童ポルノと見做される写真や動画を持っているだけで「児童ポルノ単純所持」という罪になります。

児童買春や児童ポルノは、児童の将来にもさまざまな面で悪影響を及ぼします。
さらに児童ポルノと見做される写真や動画がインターネット上などに拡散されると、大きく公序良俗を乱します。

そのため、児童買春や児童ポルノに対する刑罰は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金と重いです。

わいせつ物頒布罪:2年以下の懲役または250万円以下の罰金

わいせつな内容が書かれた文章やわいせつな画像などを頒布や販売・公然と陳列するような行為をすると、「わいせつ物頒布罪」となります。

とはいえ、日本では成人向け雑誌やアダルトビデオは市販されています。
これは、「18歳未満購入禁止」という購入制限を設け、さらに陰部に修正を加える事で黙認されているのです。

さらに、インターネット上では、修正が加えられていない画像や動画などが出回っているのも事実です。
これは、修正が加えられていないわいせつ画像・動画をUPしているサイト運営者のサーバーが海外にあるため、日本の法律では摘発できない状態にあります。

わいせつ物頒布罪に対する刑事罰は、2年以下の懲役または250万円以下の罰金と、公然わいせつ罪よりも重刑になっているのがわかります。
特に商用目的である場合には、罰金額も高くなります。

「みだらな行為」に対する刑事罰

「みだらな行為」に対する刑事罰は、青少年健全育成条例や淫行条例で規定されています。

しかし前述の通り、淫行条例は各都道府県によって異なるため、刑罰も多少の違いがあります。

東京都の条例を見てみましょう。

東京都青少年育成条例18条の6

何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為をおこなってはならない。
違反した場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金となる。

ここで東京都の場合には、青少年は18歳未満の人物とされていますが、16歳未満や6歳以上18歳未満などと定義している県もあります。

さらに、この条例に違反した場合の刑罰も各都道府県によって異なります。

東京都では2年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められていますが、例えば埼玉県では1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

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性犯罪のニュース報道の仕方と解釈、意味

「わいせつな行為」「みだらな行為」などの違いは概ね前述のような基準で用いていますが、わいせつな行為に関する事件は様々なものがあり、日々多くの事件が報道されています。

しかしニュース報道などでは、性犯罪はあいまいな表現で報道されることが多いです。

具体的には、どのような行為を行っている場合にどんな報道がされているのか、いくつか見ていきたいと思います。

女児を車に監禁し、わいせつな行為を行った

職業不詳の男が、女児を車に連れ込んでわいせつな行為をしたとして、わいせつ目的誘拐と強制わいせつ、監禁の疑いで逮捕されました。

男は、小学校低学年の女児に対して「こっちにおいで」などと声をかけて自分の車に乗せ、約40分にわたり下半身を触らせるなどの行為をした疑いが持たれています。

この事件においては「わいせつな行為」という言葉で報道されており、かつ「強制わいせつ」の罪で逮捕されていることから、性交はないことが推測されます。
あくまでも自身の下半身を触らせたほか、キスや身体に触れるなどの行為に留まったのでしょう。

女子中学生とのみだらな行為を撮影したとして再逮捕

中学2年生の女子生徒にみだらな行為をしたとして、県青少年保護育成条例違反容疑で逮捕されていた会社員の男が、その女子生徒とのみだらな行為をカメラ機能付きの機械で動画撮影して保存した、として児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで再逮捕されました。

この事件においては、まず「みだらな行為」と記載があることから、会社員の男性は女子中学生と性交をしたと考えられます。

さらに、その性交を撮影して保存していたことから児童ポルノ製造の疑いがかけられており、女子生徒の将来への悪影響を考慮して、重い刑事罰が科せられるでしょう。

女子高生に淫行容疑で教諭逮捕

臨時教諭の男は、飲食店に友人・父親と3人で訪れていた女子中学生に父親の目を盗んで声を掛け、連絡先を交換しました。
その後ホテルで女子中学生に対し、18歳未満と知りながら、みだらな行為をしたとして、淫行の容疑で逮捕されました。

この場合、「みだらな行為」さらに「淫行」の容疑との記載があることから、キスや身体への接触に留まらず、性交をしたと推測できます。

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まとめ

このようにわいせつ行為に関する事件は数多くありますが、報道などではあいまいな言葉を用いられている場合がほとんどです。

「わいせつな行為」「みだらな行為」「淫行」の3つの言葉の意味を整理しておくだけでも、刑事事件の報道への理解が深まるのではないでしょうか?

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