刑事事件と民事事件の違いとは

刑事事件と民事事件はどこがどう違う?

テレビや新聞のほか、日常的な会話の中にも「刑事事件」、「民事事件」という言葉はよく登場します。なじみのある言葉ですが、事件の当事者や争われる内容はまったく異なります。実はその違いをはっきりとは説明できない、という方も多いではないでしょうか。
そこで、民事事件と刑事事件の違い刑事事件の流れをコンパクトにまとめて解説します。

民事事件とは

構造が分かりやすい民事事件から先に確認しましょう。
民事事件とは、私人同士の紛争です。私人というのは、一般の個人や企業のことだと考えてください。
民事事件では、紛争の当事者がどちらの言い分が正しいか判断してもらうために裁判を起こし、裁判所が中立の立場で判断します。つまり、裁判所を挟んで、私人と私人が争う、という構造になるわけです
また、民事事件は、私人と私人の紛争ですから、財産上の争い(お金を払ってもらう、財産を引渡してもらう等)が中心となります。
たとえば、「貸したお金を返してくれない」ということで個人が個人を訴える場合、自分が勤めている会社に未払い残業代を請求するように個人が企業を訴える場合、さらに取引上のトラブルから企業が企業を訴えるなど、私人vs私人の組み合わせはさまざまです。
なお、民事事件では、訴えを起こす側が「原告」、訴えられた側が「被告」と呼ばれます。

刑事事件とは

これに対して、刑事事件は、当事者の組み合わせも目的も異なります。
刑事事件とは、検察官が、罪を犯した疑いがある者(被告人)を訴えて、裁判所が、本当に被告人が罪を犯したのか、どのような刑罰を科すべきかを判断する手続きです。
つまり、裁判所が中立の立場で判断する、という構造は刑事事件でも民事事件でも同じですが、刑事事件の場合、当事者は「被告人」と「検察官」です
また、犯罪の真相を究明して、犯人を適切に処罰することを目的としています。
ところで、「検察官」とは、被告人を取り調べて裁判にかける権限を持つ国家公務員で、司法試験に合格した法律のエキスパートです。後ほど説明しますが、「検察官」と「警察官」とは、まったく別ものですので注意してください。

「訴えてやる!」の意味するもの

もし、あなたが詐欺事件の被害者になったとします。
騙したられたお金が戻ってこなければ、当然「訴えてやる!」という気持ちになるはずですが、このとき「詐欺罪で訴えて刑務所に入れてやろう」と思ってもそれはできません。
もうお分かりだと思いますが、詐欺罪が成立するかどうか争うのは刑事事件であり、裁判を起こす権限は検察官にしかないからです。
ただし、警察署に告訴状を提出して「こういう詐欺事件があったので犯人を処罰してください」という申し出をすることはできます。
また、あなたを騙した相手に対し、騙し取られたお金の返還を求めて裁判を起こすことはできます。私人同士のお金をめぐる紛争ですから、こちらは民事事件です。

刑事事件の流れを追ってみよう

逮捕が始まり?

刑事ドラマなどでは、犯行現場の痕跡をもとに警察が総力を挙げて捜査し、ついに犯人を捕まえる、というストーリーが典型です。刑事ドラマなら、犯人を逮捕してめでたくエンディングを迎えるわけですが、刑事事件としては、この段階はまだまだ序章です
なぜなら、犯人とおぼしき人物が逮捕されたにすぎず、その人物の犯行だと確定したわけでもなければ、どのような刑罰を科すかも決まってないからです。

逮捕されるまで

ここからは、具体的な事例に基づいて刑事事件の流れを解説します。
ある日、強盗事件が発生し、目撃証言や防犯カメラの映像などから、Aという人物の犯行が疑われたとします。
このときに犯罪を捜査するのは「警察」です。捜査の結果、Aの犯行を裏付ける証拠を揃えば、Aを逮捕することになります。
犯人の前で逮捕状を読み上げ、「○時○分、逮捕!」というシーンもテレビでおなじみですが、この「逮捕状」を発行しているのは、警察の偉い人ではなく、実は裁判官なのです。
不当な人権侵害が行われないよう、裁判官に逮捕状の発行を請求し、裁判官が逮捕を認めた場合だけ逮捕状が発行されるのです。したがって、裁判官が「逮捕する必要はない」と判断すれば、逮捕状が発行されないこともあります。
ちなみに、警察の面前で犯行が行われた場合には、犯罪の事実が明らかですから、逮捕状がなくてもその場で逮捕できます。これが「現行犯逮捕」です。

逮捕されたらどうなる

さて、逮捕されたAは「被疑者」と呼ばれます。
警察は、逮捕したAに対し、弁護士に弁護を依頼できることを告げて、取り調べを始めますが、これには時間制限があって、「逮捕から48時間以内」に取り調べを終え、Aを検察官に送致するか、釈放するか判断しなければなりません。この検察官への送致が「送検」と呼ばれる手続きです。
もし、Aが逃亡や証拠を隠滅するおそれがない場合は、Aの身柄を解放して、事件書類だけ検察官に送致する、という手続きもできます。これが「書類送検」です。

送検

送検されたAは、続いて検察官の取り調べを受けます。
この検察官の取り調べにも時間制限があり、検察官は「送検から24時間以内」に取り調べを終え、Aを釈放するか、勾留するか、起訴するかを判断しなければなりません。
「勾留」というのは、さらに身柄の拘束を続けること、「起訴」というのは刑事裁判を起こすことです。

起訴

検察官が、Aを起訴するのが相当だと判断した場合には、裁判所に起訴状を提出し、Aの刑事裁判が始まります。ここでは、Aが起訴されたとしましょう。
裁判の中で、検察官はAの犯罪を立証し、刑罰を科すことを求めます。
これに対し、Aは自分が無罪であること(または自分の犯行だがやむを得ない事情があったこと)などを主張し、裁判所に判断してもらうのです。
前にご説明したとおり、中立の裁判所を挟んで、検察官と被告人が争うという構造です。

弁護士の役割

弁護士なら誰でも刑事事件に対応できる?

刑事事件では、裁判の場面だけでなく、被疑者として逮捕された時点から、弁護士に弁護を依頼することができます。いうまでもなく、弁護士は法律の専門家ですから、弁護士であれば誰でも刑事事件について相当レベルの知識を持っています。
しかし、すべての弁護士が同じように刑事事件を取り扱い、経験を積んでいるわけではありません。運転免許はあるが車をまったく運転しないペーパードライバーと同じように、弁護士だが刑事事件はまったく引き受けていない、ということも意外と多いのです。
弁護士として駆け出しの頃はどんな事件でも引き受けていたが、次第に民事事件が中心になったり、自分の専門分野を見つけたりして、刑事事件はほとんどやっていない、というのもよくある話です。
つまり、弁護士なら誰も刑事事件に対応できるわけではないのです

刑事事件に強い弁護士の役割は、下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。(刑事事件での弁護士の役割とは?やってくれる事・やってくれない事

刑事事件を専門に扱う弁護士

かつて、無期懲役の有罪判決を受け、刑務所に収容されたものの、再審の結果、冤罪(無実)が判明した有名な事件があります。
この事件では、被告人を弁護すべき弁護士までもが、被告人が犯人だと信じ込み、適切な証拠調べも行われないまま有罪判決に至ったと言われています。
このように、刑事事件に熱意をもって取り組んでいる弁護士でなければ、「弁護」どころか最悪の方向に裁判が進んでしまうこともあるのです。
日頃は刑事事件を扱っていないが、顧問先からの紹介なので引き受けた、という弁護士では、刑事事件を戦い抜くことはできません。刑事事件を専門とし、精力的に取り組んでいる弁護士に依頼するのがベストだといえます。